前回、普通は札所22番から23番にめぐるけれど、私はすでに23番に参拝を済ませていた話を書きました。
実は、札所23番、音楽寺は枝垂れ桜や普通の桜(ソメイヨシノなど)が満開だときれいな桜並木になることを聞いていたので、桜の頃に行っていたのです。
しかし、残念ながら少し早かったみたいで、咲いているほうが少ない状態でした。
歩き巡礼ですので、今回は西武秩父線から歩いて行きました(秩父鉄道の秩父駅からも歩いて行けます)。
秩父公園橋、通称ハープ橋と呼ばれる橋を越えて秩父ミューズパークに向かいます。
たしかに、楽器のハープのように見えますね。
音楽寺は芸能人もポスターを奉納に来るお寺
ハープ橋を渡って、秩父ミューズパークまでは、かなりの坂道になります。
自動車はヘアピンカーブのように曲がりながら、秩父ミューズパークへ行きますが、私の目的は、音楽寺なので、途中で自動車道路から外れて歩道を歩きます。
いつものように「巡礼みち」と書いてあるので、わかりやすいです。
ハアハア言いながら、坂道を登ってみますと、秩父市内がよく見渡せました。秩父ミューズパークの一帯は市内を一望できる公園です。
ここは小鹿坂峠といわれる場所だそうです。
各お寺にもあることが多い、札所を示す石碑です。
「二十三番目」とだけ書いてありますね。
ここの桜は、けっこう咲いていたので、これは期待できるなと思っていたのですが。。。
音楽寺の前は坂道多し
音楽寺の寺務所になります。
ここで納経をするのですが、まずは参拝です。
ここまで来るのにも坂道を登り、階段を登りでけっこうへたばりました。
それと、桜の花がまだまだだったことをここの場所の時点でわかりました。
寺務所の前には、「観音堂は、この上」となっているので、さらに登っていきます。
この先に見えるのは、枝垂れ桜だと思うのですが、この状態です。
やはり早かったようです。
観音堂に向かって歩いたら、手前に稲荷大明神のお社があったので、そちらも先に参拝しました。
稲荷神社ではなく稲荷大明神となっているところばかりですが、お寺の中にお稲荷さんがあることって多いですよね。
神仏分離でも、稲荷社は別扱いだったのでしょうか。
観音堂がある上に上がりますと、六地蔵が見えてきました。
人間は死後、6道、すなわち、地獄、畜生、餓鬼、修羅、人、天を転生するといわれています。
お地蔵様がそれぞれを救ってくれるといわれているのです。それでお地蔵様は、六体です。
水屋に龍神様が
お地蔵様の先には、水屋がありました。
そこに龍神様がいらっしゃいましたよ。
手をかざすと水が出るようになっています。
「龍神様は、龍王様ともいわれ、仏法守護の八部衆の一人として崇められています。又、神秘の力をもって雲を起し、雨を呼ぶ水神様としても信仰されています。
この所以をもって水屋にも龍神様の石像を祀りました。お手を清められ南無観音、お詣りしましょう」
と書いてありました。
たしかに、龍と水は関連しますね。水を多量に飲むだとか、雨を降らせるとか言われています。
音楽寺の鐘は撞くことができる
鐘楼には「松韻」と書かれた額がかかっていました。この鐘は音色もいいとの評判で、秩父の三鐘のひとつともいわれています。私が知っているのは音楽寺と、もうひとつは、札所17番定林寺の鐘ですが、あとひとつがどこの鐘でしょうね。
梵鐘には、明和五年(1768)と銘があり、秩父市の指定文化財になっています。
秩父事件で鳴り響く鐘は秩父市指定の有形文化財
「この鐘の特色は、聖観音、不空羂索観音、十一面観音、如意輪観音、千手観音、馬頭観音の順に鐘下部の周囲に鋳出されていることである」
「明治17年11月に世にいう秩父事件は、この鐘を打ち鳴らして秩父へなだれ込んだといわれている」
秩父事件については札所をめぐりと時折見かけます。秩父事件では吉田・小鹿野方面から押し寄せた群集は、大宮郷(今の秩父市)へ押し寄せたといわれています。
武装決起した人々がここに集まって梵鐘を打ち鳴らしたそうです。
この銅鐘は、高さ120cm、直径69.7cm、乳が108ついている梵鐘です。
太陽の光の関係で、打つ側の方から撮った写真のほうがわかりやすいですね。
鐘の下のほうに、聖観音、不空羂索観音、十一面観音、如意輪観音、千手観音、馬頭観音の六観音がみえます。
六観音が掘られている梵鐘は珍しいのではないでしょうか。
鐘を撞く木は、けっこうリアルな木でした。
こちらが観音堂です。「南無観世音菩薩」と書かれた石碑もみえます。その石碑のところにも桜があるのですが、まだチラホラと咲いているだけでした。
満開の頃は見事だそうですよ。
こちらの音楽寺では、いつもの奉納絵の額が正面のところにありました。
畠山基国の家来である内山源蔵は、出陣の時に母から音楽寺の観音様の御影を渡され勝利。そこで母とともに出家、観音様を供養したといいます。
「内山源蔵は老母より音楽寺の守り仏の御影を懐中に入れ出陣し勝利、後に出家して観音を供養したと云う」
観音堂のほうから写した写真です。六地蔵や水屋、梵鐘など、この写真で今まで書いた物の配置などがわかるかと思います。
それにしても残念なのが、桜が満開の頃ではなかったことです。
桜並木になっているはずだったのに。
秩父事件の時の鐘や小鹿坂の地名の由来も
昭和四十年の説明書きがありました。
「この札所は秩父地方屈指の景観地にあります。
本堂は三間四面ふき寄せ二重垂木、向拝はありませんが、江戸中期の大きな堂であります。内陣は唐様の須弥壇に立派な厨子を安置しております。本尊聖観世音は一本造り桧材で高さ八十一糎室町時代の作で地方色のある像といいます。梵鐘も明和五年の銘があり昭和三十二年二月市指定文化財になっております。
明治十七年田代栄助を総理とする秩父事件の群衆もこの鐘を鳴らして秩父町に崩れこんだという逸話ものこっております。
天長年間の昔、慈覚大師は関東霊地開拓の折、この地の優れたることに感じ聖観世音像を安置し、山路を開きたもうとき、数多くの小男鹿が現れて大師を案内したため小鹿坂の地名となったと云う縁起もあります」
音楽寺の観音堂の脇に、秩父札所創設の十三権者の石仏があると矢印が書いてありました。
これより徒歩5分とあります。
お寺の裏手になります。行ってみるとけっこう坂道を登るのですよね。でも行く価値は十分にありますよ。
裏手には秩父札所を創設した十三権者の石像
登っていくと、石仏が見えてきました。
ずらりと並んでいますね。
秩父札所を開設した十三権者の石像と書かれています。
十三権者については、札所十三番の慈眼寺でも見ました。
音楽寺の由来は松風の音から
石像はここにありました。
「1234年 妙見大菩薩、蔵王権現、善光寺如来、熊野権現、閻魔大王、具生神、花山法皇、白河法皇、徳道上人、性空上人、医王上人、良忠上人、通観法印の十三人の権者が秩父札所を開設したときに、この地の松風の音を聞き、菩薩の音楽と感じたので山号を松風山、寺名を音楽寺としたのである」
ということで、音楽寺の名前の由来が書いてありました。
山の松風の音からそれを菩薩の奏でる音楽と思って「音楽寺」となったわけですね。
確かに、なんで音楽寺という寺の名前をつけたのだろうと疑問に思っていました。
観音とか仏教に関する言葉がお寺の名前に多いですからね。
残念ながら、ここも桜が満開の頃でしたら、桜の下に石仏というフォトジェニックな場所になります。
前回にも書きましたが、22番から23番への長尾根を歩いてきた人は、この後ろにある山道を通ることになります。
明治巡礼古道と、江戸巡礼古道の交わる場所は、ここから近い場所にあります。
それにしても花山法皇とか、徳道上人とか、西国三十三観音を決めた人ではないの?と思ってしまいました。
ここの十三の石仏の下には、音楽寺のお庭になっているようで、多くの木が植えられていました。
そこに音楽寺にふさわしく、音楽の曲名と木がありました。
菩提樹にはシナモンと書いてあって、作曲モーツァルトというようにです。
松だから「無法松の一生」(村田英雄)というのもありますね。
ほかには、くちなしに「くちなしの花」(渡哲也)、さざんかに「さざんかの宿」(大川栄策)も掲げてありました。
秩父屈指の景観地ということで
先程の説明書きにもあったように、秩父地方、屈指の景観地からの眺めです。
遠くにハープ橋が見えますね。秩父駅方面にむかって見ていることになります。
遠くに見える山々はなんという名前の山でしょうか。
手前にある桜は、まだチラホラ咲いているだけです。残念ですね。
これらの桜が満開だったら、見事な光景なのです。
観音堂から降りて先程の寺務所に立ち寄り、そこで納経をして御朱印をいただきました。
桜がチラホラとしか咲いていなかったので代わりに、音楽寺の観音堂近くにあった松の木をみてください。
その下には、なにやら祠や石塔がありますね。
帰り道の光景です。
秩父札所めぐりでは、ランドマークになる武甲山がみえました。
桜はまだでしたが、ミューズパークでは、黄色い花が咲いていました。
やはりこういう光景は、晴れの日がいいですね。屈指の景観地というのがわかります。
音楽寺から帰り、ミューズパークから坂道を降りてきましたら、ところどころ、桜の花が咲いていました。
枝垂れ桜のようです。桜によっても開花の時期が異なりますから、こちらは早めの咲いていたようです。
帰り道のハープ橋から武甲山を見た光景です。
行きは坂道で大変でしたが、帰りは楽ちんです。
最後に、
音楽寺に行ったことがある人ならわかりますが、音楽寺の観音堂には、地方の歌手などがポスターを貼って「奉納」(一種の宣伝?)しています。
それはやはり、「音楽寺」という名前だからでしょう。
音楽に関係する人なら、お守りはいかがでしょう。
参拝の記念に、そして音楽に関することでのお守りに、どうぞ。
コンサートの無事終了をお守りしていただくために、ということもいいですよね。